友人に貸した3万円は彼と共に消えた

私は独身時代、当時の勤務先の同僚である友人に3万円を貸してあげたことがありました。ある日、「引っ越しして別のアパートに移るので何かと物入りで、今月は懐が寂しい」と言って私に借金を頼んできたのでした。

私は深く考えずにその場で貸してあげたのですが、それは少し軽率だったかも知れません。何しろ貸した3万円は、その後、戻ってくることはなかったのです。と言うよりも、3万円だけではなくて友人そのものが行方不明になってしまったのでした。

後で聞いた話ですが、彼にはギャンブルがらみの多額の借金があって、アパートの家賃も払えずに追い出されたそうです。しかし、次の住居が定まりませんでした。それで追い出されるタイミングで、全ての借金から逃げ出して行方をくらましたようなのです。

当然、彼は会社にも何も言わずに逃げたので、迷惑を掛けて出て行ったのです。それで、みんな心配するよりも憤慨していました。こうして私が貸した3万円は彼と共に消えましたが、あれから早四半世紀が経過して私も歳を取りました。

当時は彼のことを恨んでいた私でしたが、今では何とも思っていません。彼が今、どこで何をしているのかは知りませんが、元気で生きていてくれるようにと心から願っています。